贈る言葉

経営学部長 佐藤 勝尚

 本日、豊橋創造大学経営学部経営学科を卒業される皆さん、ご卒業おめでとうございます。また、ご家族並びにご関係の皆様にも心よりお祝い申し上げます。

 まず最初に、昨年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大においてコロナ禍において亡くなられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、今なおこの感染症と闘っておられる方々にお見舞いを申し上げます。さらに、このコロナ禍の中にあっても、医療関係者の方々をはじめとする、日々われわれの社会生活の基盤を支えてくださっている方々に深く感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。

 さて、本日、巣立つ日を迎えられ,社会で活躍されることを期待される皆さん方に、よい人間関係を作り出せる人間とはどのような素養を身につけた人なのか。さまざまな性格や考え方の人がいるなかで、誰ともよい人間関係を作るということは、それほど容易なことではありません。

 ゴードン・オルポート(1897-1967 アメリカ合衆国の心理学者)は他人や社会に適応できる健康な人格を「成熟したパーソナリティ」と呼び、成熟の規準を次の6つにまとめています。

1)自己意識を拡大できること 
 成熟した人間は、自分に対する関心と同じく、それら外の世界に対しても強い関心を寄せる。そして、それら外の世界に受動的に関与するのではなく、能動的、積極的に関与する。このような人間にならなければならない。

2)他人への暖かい思いをもつことができること
 他人と親密になる能力と共感する能力の2つをもつことは、成熟した人間の特徴である。共感する能力とは、相手と相手の苦悩や失敗の感情などを理解する能力であり、成熟した人間は、相手に対して寛容な態度で接することができる。このような人間にならなければならない。

3)情緒的に安定していること
 人間は誰しも欲求不満に陥る。そうした場合、未成熟な人間は、子供のようにかんしゃくを起こしたり、泣きごとを言ったり、他人を責めたり、あるいは自己憐憫に落ち込む。
 それに対して成熟した人間は、欲求不満に耐え、衝動的な行為を抑制することができる。
 また、人は誰でも、目の前の危険や究極の死のいずれに対しても恐怖を抱いているが、成熟した人間は、それらを受容しながらも、神経症的にとらわれることがない。このような人間にならなければならない。

4)現実的な知覚と、技能および課題をもっていること
 現実的な知覚と技能をもつとともに、自分の仕事に没頭する能力をもつことが成熟した人間の特徴である。成熟した人間は、問題中心的であり、「完成すべき課題」(重要な仕事)をもつことで、快楽や防衛などの自己中心的な衝動を忘れることができる。このような人間にならなければならない。

5)自己を客観視できること
 成熟した人間は、自分の欠点や失敗について洞察し、それをユーモアの対象にさえできる。このような人間にならなければならない。

6)生き方を統一する人生哲学をもつ
 成熟した人間は、生活の目標、人生の目的をもち、それを成し遂げようとする指向性をもっている。彼らは生活における方向決定がより顕著であり、外に向かって焦点を合わせている。不健康な人間は、しっかりした価値観をもたないか、断片的、一過性の価値観しかもたない。成熟した人間は、確実な指向性や価値観によって枠組みされた人生哲学をもっている。このような人間にならなければならない。

 社会に巣立つにあたり、よい人間関係を築ける人間になるためのこの6つの規準を深く考えてみてください。

 改めて卒業おめでとうございます。

2022年3月18日

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