贈る言葉
学部長 佐藤 勝尚
卒業おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。卒業にあたり人間の成長力についての話を餞とし贈る言葉とします。この成長力(バイタリティー)とは明日の成功と進歩を確保するために、今日の営み・活動の中で創り出していく力のことを言います。成長力ある人間たらしめるものはなにかといえば、「活力あふれた」人間であることを指します。活力とは、苦難に耐える能力、創造的で進取的な行動、そして他からの強制によらず、正しいがゆえになさんとする強い倫理的責任感、これらのものを発揮することを言います。
このような成長力の育成の方法の一つ目は、新しい知識の獲得にあります。この知識は一般教養的知識を基盤にすえて、最新の社会・経済・政治・環境の情報知識、大学で学ぶような知識理論、概念に関するものです。さらに、日本的な伝統である「主客一体」や「心身一如」に代表されるような全人格の一部として獲得された知恵です。日本的伝統の知識は人格を育むことにあり、身体的な経験を重視するのです。これらの知識を積極的に獲得してほしいと思います。
成長力の育成の第二の方法は、目標を持つことです。目標とは努力し、到達すべきなにかのことを言います。この目標は人間の創造力を刺激し、その達成のためにこそ働きたいという気持ちを起こさせ、達成の方法は未知ではあるが、完成の暁には満ち足りた誇りを感じさせうるもの、これらを与えるような狙い・目的を指しています。これからの皆さんが社会に出て担うべき新しい時代にはそれにふさわしい新しい目標が必要とされます。受け身であるよりも積極的に目標を掲げそれに向けて可能な限り自ら行動することが求められます。目標こそ未来を築く源になるわけです。
成長力の育成の第三の方法は、自分の個性(オリジナリティ)を認識しそれを伸ばすことです。活力の本質は人間たりうる個人としての力である個性の発揮にあります。個人の成長と進歩は人間の倫理的あるいは道徳的義務であり責任であるといってもよいでしょう。誰もが自己の責任において個性を培い啓発していく努力が求められます。成長力の究極的な主体は常に個々人の人間であり、その人の持つ個性の発揮にあるわけです。
知識を獲得し、明確な目標を設定してそれに向かってまい進していく、そこにおいては個性の発揮ということが重要視されてきます。さらにそこでは各人が自分自身を注意深く内省することも大切です。成長力を考えるにおいては、これらのことを自らに問いかけるべきであると思います。「自分はそれを自ら行っているであろうか、十分にやっているであろうか、もし、不十分であるとしたならば、さらにどうしたらよいであろうか」と。
成長への努力をおしまないのであれば、それは精神と心情を高揚させ、視野を広め希望と活力を生み、そして情熱を喚起することができるでしょう。
志を高く、未来をみつめよう。皆さんの前には、なすべきことが地平線のはるかかなたまで面白いほど広々と存在しているのですから。 卒業おめでとう!!
2016/03