贈る言葉
2020年3月18日
経営学部長 佐藤 勝尚
卒業おめでとうございます。心よりお祝い申し上げます。卒業にあたってハマトンの幸福論を紹介したいと思います。ハマトンという人は一生を幸福に生きた人でありませんで、挫折をしたりしていくつもの不幸をなめた人であります。
ハマトンは幸福を次のように定義しています。「幸福とは、現在の自分の生活に対する満足感の一つの度合いのことである」,簡単に言えば、幸福かどうかは、自分が現在の状態の持続をどの程度強く願っているか、それによって決まるのだ、いうことです。
たとえば、どんな仕事に就いたとしても、仕事には必ずいやなこと、面倒なことが付きまとったとしても、そのまま続けたいと思うならその人はそれなりに幸福なのだということです。さらにハマトンは幸福には「消極的幸福」と「積極的幸福」があり、あらかじめ消極的幸福が基盤としてないと、積極的幸福をいくら追い求めてもそれは空しいものであるといっています。これは、たとえて言えばよくないことをしておいて後でいくら善いことをしても心の平安は得られないわけで、このことをひとたびコーヒーに塩を入れた後でいくら砂糖をいれてもおいしくならないのと同じだと説明しています。
一方、消極的幸福がある場合は、それがささやかものであったとしても、喜びをもたらすものであるといっています。このようなハマトンの言う幸福論は、足るを知るとか、無事でいることのありがたさを知る、そういう心の持ち方から幸福感が生まれるのだということです。またハマトンは、幸福は人生のそれぞれの時期にそれにふさわしい幸福があるのだといいます。ちょうどそれぞれの季節にそれぞれの美しさがあるのとおなじように、春には春の華やかさ、夏には夏の日差しの輝き、青葉の美しさ、秋には紅葉の美しさ、冬には冬だけが持つ美しさがあるというわけです。
そして、もって生まれたいろいろな才能を使える環境で幸福というものをこのように捉えれば年をとっても誰でも幸福を享受できるものであるとハマトンは言っています。
大学の教育理念である「創造性豊かであれ」という言葉の意味するところの「創造性を持って自らの道を自分の手で切り開いていく精神」とともに、このハマトンの幸福論の言う幸福の意味を考えることをお願いしてこれからの旅立ちへの餞(はなむけ)にしたいと思います。