送る言葉

平成31年3月19日
経営学部長 佐藤 勝尚

 御卒業おめでとう。このよき門出を迎えられますことを我々教職員一同とともにお祝いを申し上げます。

 本日の学位授与式を節目に、これから活躍を期待される皆さん方の社会はICTの進化と広がりが大きな変革を迫っています。この産業のデジタル化は、皆さん方のキャリアパスにも大きな影響を与えることになります。

 卒業に当たり、企画をする力の重要性を皆さんに「餞(はなむけ)の言葉」としておくりたいと思います。

 企画する力とは、問題の解決策を考え出す力のことをいいます。すなわち、解決目的を確認し、問題を解決するために「何を」、「どのように行なう」のかを考え出す力です。この企画する力の基礎となるものは、判断する力です。判断する力とは、対象とすることがらに対してある基準をもとに結論を出す力です。この判断する力によって「解決する必要がある」と判断された問題を解決する力が企画する力となるわけです。

 通常、問題は、最終目的達成のために不都合と判断されて認識され、問題を発生させる諸要因の中から、最終目的の達成に不都合な要因を判断し、都合の良いと判断できる内容に変えることによって解決されます。従って、問題解決のあらゆるステップで、判断する力が必要とされることになります。判断する力無くして、企画する力は無いといえます。

 しかし、判断する力が、個々の現象や場面で、問題として取り上げるべきであるのか、ないのか、的確・迅速に判定する力、という意味合いが強いのに対し、企画する力は

  • 目的にかなうように筋道を立ててまとめる・・・(整合性)
  • 納得が得られるように筋道を立ててまとめる・・・(納得性)

という意味合いが強いものとなります。

 これから皆さん方が社会にでて仕事を進めるなかで、いろいろな問題に直面すると思います。その時に、これは問題だと認識した時に

  • 問題だと感じた理由は何か
  • 問題解決するには何をしたらよいのか
  • どのようにしたらよいのか
  • 関係者に納得してもらうにはどうしたらよいか

を考える習慣を身に着けておくことが必要であると思います。

 では、これからどのように企画力を高めればよいのでしょうか?

 企画する力を高めるためには、問題だと感じた時点で、次の2つのことがらを習慣的に実行してほしいと思います。

  1. 問題を整理する
  2. 納得性を得られるようにまとめる

まず、第一に、問題だと感じたものを整理することが必要とされます。
 これから多くの人が従事する組織での活動は、会社への貢献、収益の確保、組織体質の強化、生き甲斐確保を最終目的とするので、問題だと感じたということは、これら最終目的達成のために、何らかの不都合があると認識するからです。しかし、問題だと感じた理由を、常に最終目的に求めているようでは、企画する力は高められないので、企画する力を高めるためには、問題と感じたことがらと、最終目的との中間を埋める問題の連鎖体系を考え尽くすことが重要です。その連鎖体系が無意識化されている本質的理由を明らかにし、的確な問題解決へと導くことになるわけです。

すなわち、問題解決のために何をするかを整理することにあります。
 このためにはまず、問題を感じた理由に応えるためには、どうあるべきかを整理することです。この整理には、すでに持っている知識と情報がベースになるのですが、十分な知識と情報が無い場合には、専門書を読むとか足で情報を集めるという行動も必要とされます。これらの知識・情報を実態に沿うようにたとえば、KJ法のような手法で体系化するが有効です。一方、実態がどうなっているかも把握することも必要です。実態とあるべき姿のギャップを整理すれば、それが問題解決のためにすべきことがらとなります。

次に、どのようにしたらよいかを整理をします。
 問題解決のためになすべきことがらとして整理されたものを、因果関係で再整理します。何故、それがうまくできていないかを原因究明することになります。その原因に対し、どうすべきかを追究したものが、「どのようにしたらよいか」の答えとなります。

第二に、納得性を得られるようにまとめることです。
 納得性が得られるかどうかの最大の要点は、以上述べてきたことがらが、どれだけ客観的なものにするかどうかにあります。それに加えて、この企画内容の実現可能度、メリットとともに障害点、ディメリットの評価も納得性を得る大きなポイントになります。更に、組織や関係する人々が重視している視点で決めることも重要な点です。

 このような企画する力は、体系的にモノごとを見る訓練、表と裏を読み切る訓練を社会に出ての日常の組織活動の中で実践しない限り、高めることのできない能力であるとの認識を持って、これからの仕事に取り組んでいくことを望みます。

 豊橋創造大学経営学部の卒業生である皆さん方は、次世代社会の担い手である創造性豊かな若人を育成するという教育理念のもとに教育を受けた一員であるという誇りを胸に、社会で大いに活躍することを心から祈念して、私からの祝辞といたします。

 本日は誠におめでとうございます。

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