マネジメントとは、組織に成果を上げさせるための機関であり、組織はその成果を通じて、社会に貢献する存在であるという(P.F.ドラッカー:マネジメントの父と呼ばれる経営学者)。このマネジメントには、大きく「戦略的マネジメント」と「オペレーション・マネジメント」の2つがある。戦略的マネジメントは、これからの企業の進むべき道を社会・経済環境とのかかわりの中で決定していくためのマネジメントである。そのため、企業に大きな影響を及ぼす要素を考えて、戦略の方向性を決定しなければならない。中・長期的視野で、幅広く、そして深い洞察をともなった思考が求められる。さらに、中・長期的方向の結果に大きな影響を与えるであろう不確実な要素にも目を向けなければならない。ここでは、不確実な要素の幅を見極め、異なるいくつかの戦略代替案を創出して、その中からリスク(ISO(国際標準化機構)31000では、リスクは「目的に対する不確かさの影響」(effect of uncertainty on objectives)と定義されている。)とゲイン(利得)を見定めて選択することが必要となる。
一方、オペレーション・マネジメントは意思決定された戦略に従い、所与の経営資源(人、モノ、金、情報の資源)を有効に活用し、求められる成果をある期間内(たとえば1年)にあげるために行うオペレーション(業務の遂行・実行)をマネジメントすることである。ここでは、Plan, Do, Check, Act のマネジメント・サイクル(①Plan:まず目標を設定し、それを具体的な行動計画に落とし込む。②Do:果たすべき役割を決めて人員を配置し、組織構成員の動機づけを図りながら、具体的な行動を指示する。③Check:途中で成果を測定・評価する。④Act:必要に応じて是正を加える。)を回して、諸活動を効率よく定められた期限のなかで行い、着実に成果をあげることが求められる。そのため、状況を見極めて必要により素早くフィードフォーワード(結果を予想し修正する)やフィードバック(結果を受けて修正する)をかけていくことが求められる。
経営学的思考の1つは、このような「戦略的マネジメント」に求められる中・長期的視点と「オペレーション・マネジメント」に求められる短期的視点の双方のバランスを同時に考えることにある。ここでのバランスとは、ある時は中・長期的視点をより重視をし、またある時は短期的視点に重点を置くといった重点志向を言っている。