2008年度(平成20年度)卒業研究概要
PHPを用いたWeb試験システムの構築
PHPはWebページ作成に用いられているサーバサイドスクリプト言語の一種です.現在,動的なWebページを実現するために広く用いられています.本研究では,PHPによる動的Webページ生成の応用例として,Web試験システムの構築を行いました.
作成したWeb試験システムには以下の機能が実装されています.
- 選択式問題の提示(選択肢の表示順序は毎回シャッフル,MCSA問題)
- 解答の採点機能
- ユーザ認証機能(受講者,管理者)
- テスト問題編集機能
- 受験状況・成績のサマリ表示機能
- (その他いろいろ)
本システムの大きな利点は,出題者(教員)がWebブラウザから容易にテスト問題の編集(変更等)を行えることです.これにより,汎用性が向上し,有用性の高いシステムを実現することができました.
キーワード:
Web ¦ e-Learning ¦ HTML ¦ PHP ¦ Apache(Webサーバ) ¦ Linux
ネットワーク構築における冗長化と負荷分散に関する一考察
Webサービスに代表されるようなネットワーク・サービスを安定的に提供するためには,ネットワークやサーバの冗長化構成や負荷分散技術などが不可欠となります.本研究では,冗長化と負荷分散技術について調査し,実際に試験ネットワークを構築してそのパフォーマンスについて評価を行いました.
負荷分散(ロードバランス)には多くの場合(高価な)専用機器が使用されますが,本研究では,Linux PCにてオープンソースソフトウェアの LVS(Linux Virtual Server) を利用して実験を行いました.また,LVS自身の冗長化については, keepalived を使用しました.
ユーザがWebサービスを受ける状況を想定して,
- 障害発生時のサービス継続に関するテスト(冗長構成の有効性の検証)
- Apache Bench(ベンチマークソフトウェア)による負荷テスト(負荷分散の有効性の検証)
の実験を行い,それぞれの効果について確認および考察を行いました.
キーワード:
冗長化 ¦ 負荷分散 ¦ ルータ ¦ LVS ¦ IPVS ¦ keepalived ¦ VRRP ¦ Webサーバ ¦ Apache Bench ¦ Linux
講義補助を目的としたネットワーク音声認識システムの構築
現状の聴覚障害学生に対する支援は,ボランティア学生が講師の発話内容をノートに書き写すノートテイクという手法が一般的です.しかし,講師の発話内容を聞きながらノートに写す(あるいはキーボード入力する)ことは容易ではありません.このため,低コストでリアルタイムに発話内容を表示するシステムが求められています.本研究では,この問題に対し,ネットワークを利用して音声認識を行い,認識結果をリアルタイム表示させるシステムについて検討を行いました.
はじめに,講演者はブラウザからWebサーバにアクセスし,音声データを送信するためのプログラム(JavaApplet)を取得します.講演者はマイクに対して発話し,その際の音声データがデータ通信サーバを経由し音声認識サーバに送信されます.音声認識サーバはデータを基に認識処理を行い,認識結果をWebサーバに返します.認識結果を受け取ったWebサーバは,クライアント(ブラウザ)に認識結果を反映させたページを表示させます.
このとき,Cometと呼ばれるJavascriptベースの非同期通信技術を使用することで,擬似プッシュ配信(擬似リアルタイム配信)を実現します.構築したシステムの主な特徴は以下のとおりです.
- ブラウザベースのシステムであるため,利用者(講演者,受講者)の負担がほとんどない(特別なソフトウェアは不要)
→ 低コスト - リアルタイムに認識結果を表示可能
→ クライアント(ブラウザ)側のリロード処理が不要 - Webサーバの独自実装により,80番ポート(一般的に開放されているポート)のみでWebサービスとデータ中継処理を実現
→ ポートの利用に制限のある環境下での運用を考慮 - (Webサーバ・データ通信サーバをJavaで開発したため,マルチプラットフォーム運用が可能)
実験を行った結果,通常の講義で想定される受講者数分のクライアントに対し,ほぼリアルタイムで認識結果を提示することが可能であることを確認しました.
(補足)音声認識処理にはオープンソースソフトウェアの Julius を使用させていただきました.
キーワード:
障害者支援 ¦ 音声認識 ¦ ネットワークプログラミング ¦ HTTP ¦ JavaApplet ¦ Ajax ¦ Comet ¦ 擬似プッシュ配信 ¦ Webブラウザ ¦ Webサーバ
古文書のつづき文字認識に関する一検討
計算機による古文書の翻刻は,文字の切り出しや変形の多様性に対応する必要があり,一般的な活字の文字認識と比較して実現が難しいとされています.この問題に対し,現在,古文書のつづき文字認識研究が活発に行われています.本研究では,運筆(ストローク,筆順)情報を利用可能であるという前提の下,つづき文字認識を行うための手法(オンライン認識手法)について検討を行いました.
本研究では,運筆の方向が変化する点を特徴点として利用します.くずし文字(一文字)から検出された変化点をデータベースに格納し,これを認識のためのテンプレートとして使用します.つづき文字からも同様に変化点を検出した後,
- 変化点間の方向
- 変化点間の距離
についてDPマッチングにより全テンプレートとの比較を行い,もっとも類似すると判断されるテンプレートを求め,これを認識結果として出力します.
実験の結果,一文字レベルの認識率は約65%となりました.若干の改善の余地はあるものの,今後の可能性を見出すことができました.
キーワード:
文字認識 ¦ つづき文字 ¦ 運筆(ストローク)情報 ¦ 方向変化点 ¦ DPマッチング ¦ 最短距離
文字認識研究の支援を目的とした文字情報データベースの構築
計算機による古文書の翻刻は,一般的な活字の文字認識と比較して実現が難しいとされており,現在様々な研究が活発に行われています.この研究過程では,大量の文字画像データおよび付随する文字情報(読みや運筆など)が必要となります.本研究では,それらのデータを集約したデータベースの構築,および,データにアクセスするためのWebインターフェースを作成することによって,文字認識研究の支援を目指しました.
構築したデータベースには,文字の読みや字母,出典,画像ファイルや運筆系列ファイルへのパスといった研究上必要な情報を格納しました.また,データベースとのインターフェースとしてPHPを利用したWebページを用意し,研究者が簡単に問い合わせできる環境を作成しました.その他,実装した主な機能は以下のとおりです.
- 文字検索・表示機能(前方一致,部分一致,完全一致)
- 新規レコード登録機能(文字画像のアップロードを含む)
本システムを利用することにより,文字認識研究が円滑に行われることが期待されます.
キーワード:
データベース ¦ MySQL ¦ HTML ¦ PHP ¦ Webインターフェース ¦ 新規レコード登録 ¦ Webサーバ ¦ Linux
DLNAクライアントアプリケーションの作成
近年,ディジタル家電機器の普及により,ホームネットワーク上で手軽に音楽・写真・映像などを視聴することができるDLNAという仕組みが注目されています.本研究では,このDLNAに対応したクライアントアプリケーションの作成を行いました.
DLNAでは,UPnP規格をAVコンテンツに特化させたUPnP-AV規格が採用されています.このUPnP-AV規格では,機能別に,サーバ・レンダラ・コントローラの三要素を定義しています.このうち,本研究では,レンダラ・コントローラの機能を持つアプリケーションソフトウェアについて,Visual C#を利用して作成しました.
LAN上にメディアサーバが1台のみ存在するという環境の下で動作検証した結果,サーバ上のコンテンツ情報の取得およびコンテンツの再生が可能であることを確認しました.
(補足)メディアサーバとして Intel UPnP Tools を使用しました.
キーワード:
ネットワークプログラミング ¦ ホームネットワーク ¦ DLNA ¦ UPnP-AV ¦ HTTP ¦ XML ¦ Visual C#